2023

東京会場は2日間ともに完全ソールドアウト。長きにわたったパンデミックの苦難を乗り越え、「いつもの夏」が本格的に再起動したサマーソニック2023は、音楽フェスティバルの興奮と熱気を「いつも以上」に体感できた２日間となった。
東京初日は（大阪20日）のヘッドライナーは約9年ぶりの来日となったブラー。久々の復帰作『The Ballad of Darren』を引っ提げてのステージは、UKの伝説的バンドである彼らの過去と現在が交差する感動的な90分に。フォール・アウト・ボーイ、トゥー・ドア・シネマ・クラブといったかつてのサマソニの常連バンドたちも、懐かしさと新しさを交互に呼び起こすパフォーマンスとなったのが初日のスタジアムだ。また、スタジアムがパンクするほどの集客でセンセーショナルな初登場を飾ったNewJeansや、Mountain Stageのトリを務めたYOASOBIなど、サマソニが開拓し続けてきたK-POP、J-POP系のアーティスト達が大きな花を咲かせた一方、星野源がBeach Stageを丸ごとキュレートした新たな取り組みも、大きな話題を呼んだ。
東京2日目はヒップホップの巨人ケンドリック・ラマーがヘッドライナーとしてついにサマソニ初降臨。圧倒的なラップスキルとアートな演出、そして研ぎ澄まされた言葉の力でポップ・ミュージックの可能性を切り拓くステージを見せてくれた。海外から1年遅れてフェス再生期に立った日本において、ケンドリックという世界基準のヘッドライナーをスタジアム超満員のオーディエンスで迎えることができたのは、本当に大きな意味があったと思う。リアム・ギャラガーやキッド・ラロイもこの日のスタジアムのそんな祝祭感覚に大いに貢献。また、エヴァネッセンスからBABYMETALへとバトンが渡されたMountain Stageや、ノヴァ・ツインズ、ウィローといった若手まで、フィーメール・ロックの力強い潮流を体感できたのがこの日のメッセだ。
かつてのサマソニがそうだったように、両日通じて注目の若手やニューカマーが続々と登場したのも、ポスト・コロナを象徴する風景だった。ウェット・レッグやインヘイラー、ザ・スナッツらUK/アイルランドのインディー・ロックの活況を伝えるバンド達から、シャイ・ガール、FLO、ホリー・ハンバーストーン、ゲイブリエルズ……といったポップ系のアーティストまで、チェックしたいアクトのバッティングに頭を悩ませた観客も多かったはずだ。２日間にわたり、どのステージも活気に満ち溢れていた。海外アーティストの来日公演を観る機会を長らく持てなかった、若い観客の弾ける喜びとエナジーをあちこちで感じたのも印象的だった。失われた3年間を取り戻したのが2022年の夏だったとしたら、2023年のサマーソニックはワクワクするような未来を先取りして見せてくれた夏だったと言えるかも知れない。

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